ぼくおちゃんの話 警告

30代に入り、ぼくおの一人っ子生活は終わりを告げた。長女を授かったのだ。

「子供はぼくおだけで十分」とうそぶいて、したいことを自由にしていた私の20代。
ところがあるきっかけがあって、私は子供を持とう、産もうと決心した。

妊娠するまでも妊娠出産も想像以上に大変だったが、その後の乳飲み子育ては想像を絶した。
私は全く余裕を失くし、ぼくおに配る心も減っていったし、それを何とも思わなかった。
2時間と続けて寝られない生活で体も心も疲れ果て、
やっと寝られたときにぼくおが来て目が覚めたことに腹を立て、
あんなに幸せだった一緒に寝ることを断固拒否して寝室の戸をぴったり閉めるようにもなった。

長女が一歳を過ぎ、私もやっとペースを掴めるようになったがやはり初めての子で頭がいっぱい、
ぼくおがおとなしいのをいいことに、付けたし程度に面倒をみていた。

そんなある日、ぼくおはいつものように散歩に行ったまま帰ってこなかった。
一晩ぐらい、二日ぐらい、と思ったが、三日経っても帰ってこない。
私は地の底から湧くような不安でいてもたってもいられなくなり、震える手で保健所に電話した。

「ネコは保護はしません。事故にあった可能性があるなら、清掃事務所に~」
清掃事務所!!ぼくおは轢かれてゴミにされちゃったの?!!
泣いているのがばれないように必死で声を作って清掃事務所に電話した。
「三日前からです。茶色と白で・・・」
事務所の人にはばればれだったらしい。
「港区内ではね、ネコが轢かれた報告は全くないから。ね。ここずっとです。
 轢かれていれば、必ず報告が来るんです。事故じゃないですよ。ね。」

何度もお礼を言って切り、次にペット探偵事務所に電話をかけた。
「ちらしとかポスターとか・・・」
ここの人も本当に親切だった。
「ネコの場合はね、そう遠くには行っていないんですよ。
 そういうものよりも、まず飼い主さんが呼んで歩くのが一番なんです。
 近所を呼びながら歩くの。声が聞こえたら、あ、と思って帰ってくることが多い。」

人の優しい心が有り難かった。

さっそく、よちよち歩きの長女の手を引いて歩き回った。
ぼーくーー。ぼーくーー。
娘も真似して
おーくーー。おーくーー。

30分も歩いただろうか。娘が疲れたので、とりあえず家に帰った。
家の茶の間の隅に、いつもぼくおが寝ていたお座布団がおいてある。
そこを指さして、娘が「おーくー。」と言ってニッコリ笑った。
「そうよね、ぼくのところよね。またあそこで寝ればいいのにね。。。」
涙が止まらなかった。娘もちょっと悲しい顔になっていた。

「・・・ア・・・」

えっ!何か聞こえた?
この三日間、空耳で何度戸を開けたことか。
でも、今のは、今のは、、、!

ぼくおだった。何もなかったかのように、ぼくおが帰ってきてくれた!
ほんとに、誰にお礼を言えばいいのだろう。
ありがとうございました!ぼくおが、ぼくおが帰ってきました!!


これは警告だったのだ。
自分の弱さで心に余裕を失くし、そのしわよせがぼくおに行くのなら
ぼくおをもうあなたには返しませんよ。
そのときは確かにそのメッセージを受け取ったのに。
それが最後のチャンスだったのに。

by mamimi-loves-leo | 2010-03-31 15:20 | ぼくお | Comments(4)

Commented by ふらりん at 2010-03-31 22:19 x
次回を知りたいけれど知りたくない・・・。
ぼくおちゃんの・・・まみみさんの・・・気持ちが
切々と伝わり泣けちゃいました。
Commented by まろん at 2010-03-31 22:53 x
お気持ちとてもわかります。
私も子供が生まれて、子育てに必死になっているとき
置いてきたペット達に心がなかなか向かず・・・。
もっと早く引き取ってあげられたら・・・。
もっとみてあげられたはずなのに・・・。
今になって後悔ばかりです。
手を差し伸べられたのは本当後になってからでした。
私が一番できたはずなのに・・・。
今は、もう絶対後悔しないように・・・
一生懸命できる限りのことをがんばっていきたいと
日々思っています。
Commented by mamimi-loves-leo at 2010-03-31 23:15
ふらりんさん♦

れおが可愛ければ可愛いほど、ぼくおへの後悔がわいてくるのです。
このへんできちんと自分の心も整理しようと思い、書いてみました。
四月からはまた新しい気持ちで始めるために、最後まで書いちゃいましたよ。
読んでみてね。あー、自分でも泣いた泣いた・・・
Commented by mamimi-loves-leo at 2010-03-31 23:22
まろんさん♦

そうですね。大切なのは、二度と同じ過ちを犯さないことですよね。
ぼくおにはずっと心の中で謝りつつも、四月からは新しいことを書き始めようと思って、
最後まで書いてみたらやっぱり悲しい~の。。。
でもまろんさんは手を尽くしたのだから、私とは違うわよ。
ガイちゃんもプーちゃんも、幸せに眠ったと思います。
でも、もう一度会いたいわよね。